2012/11/12

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面白い所に付箋を張りながら読んでいたら、
多すぎてエイのヒレみたいになってしまった。


一部引用と、読み返す時のメモを。


p.26からのカールシムズのwebサイトはここ

化石の記録では、絶滅の規模が二倍になると頻度は1/4になり、絶滅の規模が三倍になると、頻度は1/9になった。そして、
p.34
消滅した巨大企業に関するレスリー・ハンナの統計を調べ、化石の記録から得た五億年分のデータと比較した。その結果、時間軸は違うが、絶滅の規模と頻度の関係はまったく同じであることが証明された。

p.43
パルチンスキーの対処法は、3つの基本原則に凝縮できる。
第一に、新しいアイデアを追求し、新しいことに挑戦する。
第二に、新しいことに挑戦するときには、失敗しても大きな問題にならない規模でする。
第三に、フィードバックを受けられるようにし、失敗から学びながら進む。

この、「パルチンスキーの三原則」は、アダプト思考のエッセンスといえる。

それを著者の言葉で表すと、
p.59
アダプトの基本となるステップは3つある。
第一に、「失敗を恐れずに新しいことを試す」
第二に、「失敗はよくあることなので、失敗しても大きな問題にならないようにする」
第三に、「失敗した時には、それがわかるようにする」

同調圧力について
この追加実験の結果は面白い。
p.77
サクラの一人が集団と違う答えを選ぶだけで、被験者は社会的に認知の呪縛から開放されたのである。

p.89で紹介されるDavid Kilcullenの論文がこれ。
Twenty-Eight Articles Fundamentals of Company-level Counterinsurgency


トラブ大佐のスライドは見つからず。気になる。


p.132
大企業のなかに技術者とイノベーターからなる自由な小さなチームを作り、監修にしばられた企業の組織改装からうまく守るスカンクワークス型モデルの価値は、いまでは広く認識されている。


第二次大戦終盤、ある若いロシア人兵士が瀕死の状態で戦争捕虜の病院に担ぎ込まれた。
アーチー・コクランはスコットランド出身の疫学者で、この病院に収容されていた。
p186-187
「モルヒネがなく、私にできたのはアスピリンを与えるくらいで、効果はなかった。当時はロシア語はほとんどわからず、病棟にもロシア語がわかる人はいなかった。私はたまらなくなってベッドに腰を下ろすと、両腕で男を抱きしめた。すると、叫び声はぴたりと止んだ。それから数時間ほどして、男は私の腕の中で静かに息をひきとった。彼が泣き叫んでいたのは胸膜炎のせいではなく、孤独のせいだったのだ。私はこのとき、しに浮く人の看護について、かけがえのないことを学んだ」

著者のアーチー・コクランについて、「ゴッドコンプレックス」についてのスピーチがこちら。


今経済成長著しく、日本でも話題に上ることが多くなってきたインドネシア
2003年、この国での道路建設事業の腐敗の測定する事例。
この事例では、監査を入れるトップダウン型アプローチと、住民全員からフィードバックを得ようとするボトムアップ型アプローチを比較した。
すると、トップダウン型アプローチでは使途不明金が減ったが、ボトムアップ型アプローチではほとんど役に立たなかった。
p.196
(前略:ボトムアップ型アプローチはトップダウン型アプローチよりも有効であることを示す例をこれまでいくつも取り上げたし、この先ももっと強力な例が出てくる。実は、それこそが核心である。世の中は複雑だということなのだ。中略 ある成功例を別の状況で取り入れてうまくいくかはどうかわからないため、実験と適応をくり返さなければならない)

p.264
政府がやるべきことは、地球を救うためにこうしなさいと指図することではない。
私たちがいつも地球環境の事を考えた選択ができるように、競争条件を書き換えることである。

疎結合と密結合
p.271
 ペローが危険だと指摘するシステムは、複雑で「密結合」しているシステムである。個々の要素が緊密に結びついているプロセスは、一度なにかが始まってしまうと、止めるのが難しいか、不可能になる。ドミノ倒しは、特に複雑というわけではないが、密結合している。


p.296-304 結合を緩める
p.304-307 スリップ、ミステイク、バイオレーション

も重要な指摘ですが、これは全体で読まないと理解しにくいので省略。

p.321
私たちにできるのは、ハイリスクなシステムの複雑性と結合をできるかぎり減らすこと、内部告発を奨励して大事故につながりかねない潜在的エラーを見つけ出すこと、そして、悲しいことではあるが、最悪の事態に備えておくことである。

p.353
画期的なイノベーションが既存の秩序を破壊するのは、その新しい技術が従来の顧客層にはなんの魅力もないからにほかならない。新技術はこれまでのものとは違うし、自分たちにしてみれば劣っているとしか思えない。しかし、新しいニッチな少数派の顧客層にとっては、既存の秩序を破壊する力をもつ新しい清貧こそが、自分たちの欲しかったものである。
これはすごく共感するとともに、自分の情報感度を常に研ぎ澄ましていないと、すぐ「従来の顧客層」になってイノベーションに置いていかれてしまうという危機感も覚える。

p.373ほめ言葉サンドイッチ
相手を批判するときには、「ほめる・しかる。ほめる」という順番で話すと効果的だ。「よくできている。ただ、○○(ここに大切なフィードバックを入れる)ができていたら、もっとよくなっていただろうな。でも、最初にいったように、全体としてはよくできている」というように、ほめ言葉のパンで批判をサンドするのである。

これはよく言われる話だし、実際使う。ただし、それには弊害がある。

これは一緒に働く人たちとの関係をこじらせないようにするうまい方法だが、ほめ言葉にはさまれた批判が記憶からすっぽり抜け落ちてしまうおそれがある。さきほどの例のように、「よくできている。ただ……」と言われたら、「全体としてはよくできている」という部分が強く印象に残る。気分はよくなるが、仕事がよくできるようにはならない。

p.378
サープは検証チームに必要な人をこう説明している。「あなたのことを気にかけていて、自分の生活でも正しい判断をしていて、見返りを求めずに素直な意見を言ってくれる人こそが必要なのだ」。
チームとは言えないけど、少なくとも一人は思い浮かぶ。
そして、私は誰かの検証チームの一員と思われているのだろうか?



番外編
p.361
「彼は数学者としては非常に注意深いという人物ではなかった。
彼はたくさんの間違いを犯したが、よい方向に間違えた…私
は彼を真似ようとしてみて、よい間違いを犯すというのは、実
に難しいのだということを知った」
-数学者の志村五郎が盟友の谷山豊の人生を振り返って記した言葉

p.386
「挑んだ。失敗した。だからどうした。また挑め。また失敗しろ。前より上手に失敗しろ」
-サミュエル・ベケット

小さくはじめる、仲間をつくる、ミスを糧にする
ってよく言われるけど、彼がTEDで語ったように、当たり前のようで当たり前じゃない。
このBlogもチャレンジの一環で、小さく、そして数をこなすという意味では悪くないと思っている。
実験したい事はいっぱいあるので、それはまたいつか。


追伸
参考文献に過去に読了した本(と、今積んでる本)がでて、知識が繋がっていく感覚が気持ち良い。